教授
津田 新哉
Shinya TSUDA
世界の農作物産地では病害虫による被害に頭を悩ましています。作物に病害虫が発生すると市場や消費者の基準を満たした収穫物が得られず、時には作物が枯れ甚大な経済損失を招きます。特に、病害虫の中でも効果を示す農薬が全くない植物ウイルス・ウイロイド病の防除には手を焼きます。それらに困らないためには予防がとても重要です。本研究室では、植物ウイルス病の伝染環を解明し、その連鎖を断ち切る新たな防除技術の開発に取り組んでいます。
・作物に発生するウイルス病の診断同定技術の開発
・果樹に感染する植物ウイルスの宿主域および疫学調査
・土壌伝染性植物ウイルスの感染経路解明
・微小害虫等による植物ウイルス媒介機構の解明
・植物ウイルスの種子伝染機構の解明
植物に感染するウイルスは自然界に1,000種以上存在するといわれています。それらの大半は植物の汁液によって拡がります。収穫や整枝等の作業に用いたハサミや管理者の手指等に付着した汁液で他の作物に拡がります。一方、植物ウイルスの中には昆虫により媒介されるものもあります。代表的な昆虫は、イネ等に寄生するヨコバイやウンカ、野菜類等のアブラムシ、コナジラミ、アザミウマ等です。また、土壌中に生息するある種の線虫類やカビも特定のウイルスを媒介します。植物ウイルスが一度感染したらその植物は決して治りません。動物であれば免疫治療で治ることもありますが、植物には同じ機能は無いので圃場の衛生管理に最善の注意を払う「予防」がとても重要になります。そのために圃場では化学合成農薬が多用されますが、我が国の使用量は単位面積当たり中国、韓国に次いで世界第三位です。化学農薬の適正使用は作物の安定生産に貢献することは紛れもない事実ですが、その一方で環境に対しても相当の負荷をかけています。本研究室は、圃場衛生管理に役立つ物理的防除技術、あるいは媒介生物の特性に着目した伝染環を遮断する生物的防除技術等の開発を通じて我が国の環境保全と農作物の持続的安定生産に貢献します。