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津田新哉 教授が2020年度 日本植物病理学会 学会賞を受賞しました

津田新哉 教授(植物医科学、植物ウイルス学)が、2020年度 日本植物病理学会学会賞を受賞しました。

日本植物病理学会 学会賞は植物病理学において、顕著な業績を挙げた会員または顕著な功績のあった会員に贈られる、大変名誉ある賞です。

【受賞名】 2020年(令和2年)度 日本植物病理学会 学会賞

【授与機関】 日本植物病理学会

【受賞課題名】 植物ウイルス病の発病機構と防除に関する研究

【受賞概要】
 戦後の日本農業は、田植え機等の農作業機械と病害虫防除のための化学合成農薬等の開発力に支えられ発展してきました。単一作物の周年栽培で発生する連作障害を制御する化学農薬の臭化メチル剤は、病害虫に加え雑草防除にまで卓効を示す土壌くん蒸剤として生産現場で広く使われてきました。しかし本剤は、地球のオゾン層の破壊物質として国連で指定され我が国では2012年に姿を消しました。臭化メチル剤の絶大な効果に依存してきたピーマンモザイク病の防除は新たな局面を迎えました。
 ピーマンモザイク病は、種子・土壌・接触伝染する植物のウイルス病です。ピーマン等がこの病気に罹るとその後の生育が著しく抑制され、出荷できない奇形果が多発します。また、伝染力が強いため圃場内で瞬く間に拡がり収量が激減します。このウイルスは土壌中で安定性が高いため、一度本病が発生した農家では常に再発の危険性を抱えています。
 病気を防ぐための第一歩は正確な検査です。土壌のウイルス汚染程度を的確に把握するために、迅速かつ大量の試料を検定できる新たな血清学的検定法を開発しました。これにより、モザイク病発生圃場の潜在リスクを正確に判断できるようになりました。
 検査法の次は防除法です。植物では、ある種のウイルスに感染していれば同種もしくは近縁ウイルスの感染から免れる現象が知られています。そこで、予め植物に弱毒化したウイルスを接種し、その後の強毒ウイルスの感染を防ぐ「植物ウイルスワクチン」を使った生物防除法を開発しました。本法を生産圃場で試したところ、高い防除効果を発揮し、経営的にも採算が確保できることが分かりました。
 地球環境に有害な化学農薬に代え、経営も成り立つ環境に優しい病害虫防除技術を開発するのは困難を極めます。幾つかの防除技術を調和させた総合的病害虫管理体系は、持続的な安定生産を目指す21世紀農業の基本になると考えています。生産者は元より、行政や技術開発機関とも連携し未来に安心できる研究を続けていきます。